絶滅危惧種・ムラサキの花(万葉植物園)

学名: Lithospermum erythrorhizon
和名:紫(ムラサキ) 生薬名:紫根(しこん)
ムラサキ科 ムラサキ属
絶滅危惧lB類

奈良市に行った際、春日大社の万葉植物園へ寄ってみました。
「万葉植物・ムラサキ」の案内の先に4畝ほど耕された小さな畑が。
予備知識なしで初めて見て、花色が白いことにまず驚きました。
そして、想像していた以上に草丈があることにもびっくり。
名前の由来は、昔、その根を紫色の染料として使っていたからでした。
20180529 IMG_8554ムラサキの花clip

1匹のモンシロチョウがムラサキの小さな花に。
丁寧に一つ一つ、舞い移っては蜜を吸い、ムラサキから離れない様子。
小さな花だけど、よほど美味しい蜜らしい。
20180529 IMG_8551 (1)補正 2ムラサキにとまるモンシロチョウclip

写真を撮っていたら、
植物園のスタッフさんが来て、親切に色々と教えてくれました。
「日本の自然界で出会うことはまず不可能になった希少種」と。
ムラサキはレッドデータブックの筆頭に上がるほど逼迫した絶滅危惧種らしい。
20180529 IMG_8554ムラサキの花
畝によって生育が違って見えたのは、年生によって分けているから。
3年生株は70cmほども草丈があり、
根元から分かれた茎の先でさらに分枝しているのが2年生と違う。
20180529 IMG_8553ムラサキ年長株

発芽して3年育った株が並ぶ畝。
この園では、ムラサキは4年経つと畝の土を入れ替えるのだそうだ。
同じ土では4年も経つと生きられないのだそう。
一種の連作障害?病害虫に弱いということなのでしょうか。
根は長い直根らしいので、移植も難しいのでしょうね。
種はよく結実するけれど発芽率が低く、増やすことがとても難しいらしい。
かつて自生していた頃は、広大な平原が残されていて、
少しずつ生育場所を変えながら世代交代して存続できていたらしい。
20180529 IMG_8552 (1)補正 2ムラサキ年長株の畑

今や、広くて平らな所は人の建造物か、田畑の耕作物が並び、
もはやムラサキが自力で種を保存できる場所は日本には残されていないということ。
そう思い馳せると、何だか悲しい気分になってきました。
20180529 IMG_8552 説明板(1)補正 2ムラサキ年長株の畑clip

「萬葉名: むらさき  十七種
現代名: ムラサキ(ムササキ科) 花期6月~8月
学名: Lithospermum erythrorhizon

『ムラサキ』は日当たりの良い草地に自生する高さ50センチ程の多年草であるが、わが国では絶滅危惧種に指定されている。
昔は武蔵野や蒲生野(ガモウノ)など各地に自生し栽培されていたが、現在、野生種は日本中に約1,000株程と言われている。
『紫草(ムラサキソウ)』は茎や葉などの全体に細かな『粗毛(ソモウ)』があり、6~7月頃、5弁の白い小さな花が咲く。
古代『紫草(ムラサキソウ)』は貴族が着用する紫の衣服の染色に使われており、太い根を乾燥させると赤味を帯びた紫色になり、『紫根染め(シコンゾメ)』の重要な染料として使われ、名前はこれに由来する。紫色は日本だけでなく、エジプト・ギリシャ・ローマ・中国などでも高貴な色としてみなされ、尊重されてきた。また『紫根(シコン)』は漢方で解熱・解毒の薬にしたほか、皮膚病、やけどの妙薬などにも利用された。」

 と、説明板に書かれています。

スタッフさん曰く、蝶の他にも色んな昆虫が集まってくる植物なんだそう。
20180529 IMG_8551 (1)補正 2ムラサキにとまるモンシロチョウ

発芽率が悪いのだから、種の結実が多くできるように
ムラサキの生き残るための必死の戦略なのかもしれませんね。

スタッフさんが突然スラスラと暗唱して
意味や当時の歌詠みの文化の一旦を説明してくれた歌が
入場券に載っていたので、記念に引用させていただきます。
 
託馬野(つくまの)
  生(お)ふる紫草(むらさき)
    衣(きぬ)に染(し)
 いまだ着(き)ずして
     色(いろ)に出(い)でにけり

          <笠女郎(かさのいらつめ) 巻三~三九五>

大意:片思いの恋を紫色に染めた衣装にかさねて『7いまだ結ばれないうちに他人に知られてしまった

笠女郎(かさのいらつめ)さんが大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌らしいです。
古典も文学も苦手でさっぱりですが、ほんのちょっとだけ古風な香りを味わった感がありました。
有名なのは次の2首でしょうね。
私ははじめの額田王の一首しか覚えてなかったですが。

茜(あかね)さす野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る
                    額田王(ぬかたのおおきみ)
のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも
                    大海人皇子(おおあまのみこ)

根っこを抜かれて染料にされたり、
恋路の歌の題材にされつつも、
挙句の果ては、生息地をすっかり奪われ、
紫にしてみれば、ヒトに対して怒り心頭だったりしてね。

藤の花たちが花期を終えた5月下旬火曜日
開園まもない朝、人の少ない静かな園の片隅で
静かにひっそり蝶に蜜を提供する
すらりとノッポ、とっても小さな白花の植物、ムラサキ。
その佇まい、目に焼きつきました。

        Thank you for coming~♪
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プロフィール

ぶるどねーじゅ

Author:ぶるどねーじゅ
はじめまして。
家族とわんこが大好き、
自然や植物が大好き、
Classic&Jazzが好き。
サザンも大好き。
信州に暮らしております。

14歳11ヶ月のままの
愛犬シャーロック
(1998.5.2~2013.4.16)
の穏やかな眼差しを感じながら
庭作りをしております。

風任せ、気ままにつづります。

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